鹿角平天文台通信

星 に 一 徹

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「道しるべ」〜導く星☆北極星〜

星を見に夜の林道を走る。自宅からわずか数キロ、見慣れたはずの道がまるで違う表情を見せる。 ヘッドライトに浮かぶ、白い樹肌、底無しのように見えるわずかな窪み。覆い被さる不安と微かな興奮。バイクを止め空を仰ぐ。
 どんな時もそこから見守っていてくれる星がある。ずっと昔から、昼も夜も、降っても晴れても…。それに気づいた時、その星の光に安堵感を抱くだろう。

北極星。旅する者の道標。星巡りのめあて。頭の上と真北の地平の中間より少し下に、ポッリと一つだけ輝いている北の一つ星。磁石で北を確かめれば、以外に簡単に見つかる。北極星はその土地の緯度と同じ高さにある。東京なら35度、札幌なら43度。これは地球が丸いことの証、緯度を10度移動したただけでも意外な高さに見える。近代日本地図の祖、伊能忠敬の日本安脚の目的の一つは北極星の高さを測り地球の大きさを計ることにあった。
 北極星を探すのに役立つ星列に、北極星と地平線と同じ間隔ほど離れたところに、北斗七星やカシオペア座がある。北斗はヒシャクのマスの先端の星を結んで北に5マス分伸ばすと北極星だ。カシオペアはWの両脇を伸ばし交わった点と真ん中の星を結んで北に伸ばす。ついでに星図や写真と実際の星空のスケールの差を憶えておこう。北斗の星列の大きさは、北極星までの間隔と同じ位の大きさだし、カシオペアならそれより少し小さい大きさだ。思っているより大きな星列に感じるかも知れない。
 星座の大きさは角度で表わしている。高度やレンズの画角と同じ〃度〃だ。腕をいっぱいに伸ばしたときの、グーの幅が約10度、パーが約20度、指三本そろえた幅が約5度ぐらいになる。これらを足がかりに、明るい星をつなげて簡単な星座から探してみよう。
 スターウオッチングにあると便利なのが、星座早見盤(高度目盛り付きが良い)星図・星座ガイド(早見盤は星座の形が周辺部で変形がひどいため)方位磁石、時計、赤セロハンで減光したライト、天文年鑑(星の時刻表の様なもの)などだ。

写真から北極星を探してみよう。北の中空よりやや下にポッリと一つだけ輝いているのが北極星。日時によっては、こぐま座β星が紛らわしいかも? でもよく見ると小さなマスが作れる。マスと北極星を結べば小北斗七星になる。写真の位置は晩夏の21時ごろ

北斗七星はヒシャクのマスの先端の星を結んで北に5マス分伸ばすと北極星だ。カシオペアはWの両脇を伸ばし交わった点と真ん中の星を結んで北に伸ばす。

北極星を探しているうちに、だんだんと星数が増えてきていないだろか? 星を良く見るには、目を暗闇に十分慣らし、外灯の明かりが直接目に入って目を刺激しないよう注意(ライトを赤セロハンで減光するのはこの為)。夏でも長袖など、防寒に気をつけ暖かい服装で、寒いと星を見る気力がなくなる! また星座ガイドなどで星を探すときは、星も地球の自転で1時間に15度動いていることをお忘れなく。
 双眼鏡もあれば便利だが、天体の導入には慣れと胸に肘を当てるなどのブラさない工夫も必要だ。20×8のコンパクトタイプは星を見るには使いずらい、口径30〜50_、5〜7倍程度のものが、星空を手軽に楽しむには十分だろう。ほかの用途にも使えるしね。

 どうせなら望遠鏡で宇宙の深遠に触れて見よう。バイクに天体望遠鏡は積めないけど(私は積みましたが…)天文台に泊まり夜を過ごしてみるのもいい。1県に1〜3館の宿泊できる公共天文台がある。宿泊施設と言っても観測者用の簡易宿泊施設の様なものから、観光客用に作られたホテルやバンガロー、天文台に隣接するペンションやキャンプ場など宿泊形態は様々だ。もし旅先で天体観望をスケジュールに組み入れたいのであれば、目的地近くの天文台に電話で問い合せてみよう。
 しかし、ただ電話で宿に予約を入れればOK、と言うわけではない。まずは天文台の夜間公開日(昼間の公開時間は主に展示室、施設、太陽観望などで当然星は見れない。稀に金星などの明るい星の観望をする事もある)を聞いて、それに合わせて宿泊日程を決めなくてはいけない。それ以外の日に訪れても天文台を外から見ただけで終わってしまう。
 天体望遠鏡の観望対象となるのは、星雲・星団、二重星、惑星・月などだ。ただし半月や満月の頃は、月明かりに邪魔され星雲・星団などは見づらくなる。逆に月のクレーターを見てみたい人は半月(月齢7。ちなみに満月は月齢15)前後が見頃だから、月齢を確認(翌日の月齢は新聞の気象欄に載っている)して天文台を訪れるといいだろう。
 もっとも天体観望は天候に左右される。空に雲がかかれば何も見ることはできない。しかしだからこそ晴れて天体観望ができた時は感動もひとしおだ。
 旅先は星空も奇麗な所が多く、酒飲んで寝るではもったいない! 星空を見上げるそれだけで、生まれ立の星や死に逝く星の何億年の記憶を、何万キロから何億光年まで離れた星達を一度に見ることができる、古代の神話や私達の住む地球や銀河の事もわかる。それはツ−リングで得られる感動と遜色がないはずだ。しかし星達の小さな囁きは知ろうとしなければ、何も語ってはくれない。
 知識は学ぶ為だけでなく、ビックリしたり面白がる為にもある。天の星、路傍の石にも知れば知るほど不思議と驚きが隠されている。何気なく見過ごしてしまう前に、まずは道しるべの星からはじめよう。

★なこぼれ話。
天文台の話が長いのは、担当のT氏が天文台なら曇っていても、いつでも星が観察できると思っていたから(まさか!) 
OR97年3・4月号掲載。「ヘールボップ彗星を見よう。前編/後編」を北天の星座ガイド&HB彗星観望ガイドを削除し、98年9月号特集夏の夜遊び!中の「星の見える宿」を加え再編集。
口径50p以上を備えた宿泊できる公共天文台リストも掲載。宿泊できる天文台については、天文誌や旅行ガイドなどで調べてください。
アストロアーツのHPにプラネ/天文台のPAOナビがあり調べられる。またニコン星空案内やWEB電子星座早見のお星様とコンピュータ ★彡は星を探すのに役に立つ。


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