鹿角平天文台通信

星 に 一 徹

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「七夕はいつ?」

夏の夜、天上には伝説の二つの星が天の川をはさんで向かい合っている。星は知らなくても、七夕なら知っている人も多いはず【牛飼いの真面目な青年牽牛。その働きぶりが「天帝(北極星)」の目に留まり天帝の一人娘の織姫の婿にとお見合い。たちまち恋いに落ちる二人。ところが働き者だった二人は恋に溺れ仕事をしなくなり、牛は死にかけ、織姫の生地の生産はストップして、神々の服はボロボロ……。怒った天帝は二人を天の川の両岸に離れ離れにしてしまった。ところが織姫は毎日泣いてばかり。可哀相に思った天帝は、真面目に働くことを条件に年に一度、七夕の夜だけ逢うことを許した。その後真面目になった二人の為、七夕の夜になるとどこからかカササギが飛んできて、天の川に橋を架けるようになった、と言うのが七夕の基本パターン】。どれが七夕の星か探してみよう。頭上の天の川の岸で一番輝いているのが織姫星。その天の川の対岸を南に下がった中空に光るのが彦星。間違え易いのは織姫のすぐ東で光るのが白鳥座のデネブ(後七夕星)。天の川の中にデネブを北端に十字架状の星の並びを作っているので見分けられる。それは大きな一羽のカササギか、その群れにも見える。その織姫と彦星が年に一度7月7日の夜にだけ逢うと言う七夕伝説。でもどうしてこの日なんだろう?

右の星図を参照に七夕の星々を探してください。

織姫と寄り添う小さな星とで三角形と平行四辺形がつくれる。三角の二つが七夕の子どもで四辺形が瓜畑。V字に結ぶと織姫星の固有名ヴェガの語源=落ちる鷲。
彦星の両脇の星がつれている犬星。天の川側が継子星で後が実子星。一文字に結べば、彦星の固有名のアルタイルの語源=飛ぶ鷲。鷲座の原型。
織姫の近くで光る明るい星が白鳥座のデネブ(後七夕星)十字の形に星を繋げると北十字星。ちょうど翼を広げた白鳥の姿だ。もちろん天の川を渡す並んだカササギにも見える。

8月上旬21時ごろの空。

伝統的七夕は陰暦の7日。つまり上弦の月が必ず天の川の方向にある。月の光で天の川は見えないが、夏の半月は早めに沈む。
月が沈んでから現れる天の川を待つのもおつなもの。宵の頃は中空だった二人を隔てる天の川も頭上だ。
この日ばかりは夜更かしで星を眺めたい。伝統的七夕の翌日を「星の日」として休日にしてもらいたい(移動休日でわかりづらいって? ハッピーマンデーより100倍まし)。

天の川は空の状態が悪いと見えないほど淡い光の帯。写真のようにくっきりと見えるわけではない。あのぼんやり見えているのが天の川ですと指差して、初めて気がつく人も。

こういった伝統行事の日付は旧暦(太陰暦)で考え直す必要がある。太陰暦は月の満ち欠け・月齢の暦だから7日は上弦の月(宵の半月)だ。月は夜をゆく船に例えられる。その月が一番船に似た形なのが半月。その半月が一年に一度、欠け際が七夕の星を乗せる向きで天の川を渡るのがこの日だ(※注。旧七夕は8月上旬から中旬)。そうなるとこれは特別な日に違いない、天の川の両岸に目をやれば、輝く星があるではないか! きっとこれは恋人同士で・・…で七夕伝説が生まれたのでないかと私は想像するのだが、七夕伝説の中の月は意地悪だ。雨が降って天の川が増水し渡れなくなった織姫は月の船に渡してほしいと頼むのだが、月の舟人は冷たく乗せるのを断わっている。でも、悲しむ織姫をカササギの群れが翼で橋を作ってくれて対岸に渡してくれるのだ。(月は西から東へ移動しているので、織姫が牽牛に逢いにいく。もちろん逆の説もある。※東から西じゃないのと思う人は、毎日同じ時間に月を見てください)。

ところでこの二人は、一年に一度しか逢えないとは言え(だからこそと言うべきか?)子どもがいてもおかしくない。じつはいるのだ。織姫をよく見るとすぐ脇の二つの星とで正三角形を描いている。この星が七夕の子ども。北側の星はよく見ると一つではなく、二つの星が非常に接近している二重星であることが非常に目の良い人なら分かる。更に望遠鏡で見るとそれぞれがまた二重星のダブルダブルスタ−だ。織姫は三人の子持ち(うち片方は双子)でなんと孫までいたことになる。さらに98年の電波観測で織姫星の回りに大量の塵が観測された。これらの塵はやがて惑星の元となる。つまり織姫は現在妊娠中なのだ。一方、彦星はと見れば、両脇に星があり直線的に並んでいる。でもこれは子どもではなく二匹の犬。彦星は牽牛とも言い、牽牛とは牛引き紐の事。彦星は牛飼いだから犬を連れているのだ。ところが沖縄では両脇の二星を継子星・実子星といい、継子を先にして天の川を渡る姿に見立てている。継子とは血の繋がっていない子どものことだから、織姫の連れ子? それとも悪い女にだまされて子どもを押しつけられたのか? 何があったのだ沖縄の彦星!

 

織姫と寄り添う小さな星とで三角形がつくれる。その二つが七夕の子ども星。V字に結ぶと織姫の固有名ヴェガ(下降する鷲)の語源の形になる。。星図の左(北)側の子ども星がダブルダブルスター。鋭眼の人なら分解できるかも? 織姫の左側の菱形の星列が七夕の瓜畑だ。西洋では竪琴に見立てた。その畑の境にあるのがリング星雲。ここは七夕らしく、彦星が送った、織姫の結婚指輪に見立てたい。

※ヴェガは落ちる鷲と訳されるが、正確には翼をV字にたたんで下降する鷲で獲物を見つけて落ちる姿のこと。織姫 かなりの肉食女子(^^;
アルタイルは飛ぶ鷲と訳されるけど、翼を広げて旋回してる様子を表す。落ちる鷲・飛ぶ鷲で二匹が戦ってる姿だと誤訳もある。
二匹の鷲は形から推測すると、へびつかいα(ラスアルハゲ)あたりをまわっている(ちなみに結ぶと夏の裏三角になる)。ベガの狙いはその先の冠かな?

さて天文学的には二つの星の距離は16光年(1光年は9兆5千億q)で年に一度逢うのは難しいそうだが、星の寿命(共に若い星で、少なくともあと10億年以上長生きすると考えられている)を人間の寿命に置き換えてみると年に一度は、四六時中べったりしている事になる。また伝説の成立も、二つの星が天の川を挟んで相対する話は紀元前7世紀頃の「詩経」に記述され、恋人になるのが下って2世紀の後漢時代。年に一度の再会となるのは、6世紀の「荊楚歳時記」あたりからで、宇宙の遠距離恋愛は人間の物差しとは違うようで興味深い。
 七夕は陽数の7の重なる節句の日でもあるが、梅雨も明け、七夕の星達が頭上で輝く月遅れや旧暦の七夕の方が似つかわしい。その意味あいからも月齢で祝いたい。しかも8月には12〜13日をピ−クとするペルセウス流星群があり多くの流星が見れるおまけ付きだ。天体望遠鏡をのぞく機会があれば七夕の瓜畑にある、リング状星雲(琴座のM57星雲)を見てほしい。彦星が織姫に送ったエンゲージリングの様に輝いてる。

※注記。今後の旧七夕は次の通り。

2005年8月11日。2006年7月31日。2006年8月30日(閏七夕)。2007年8月19日。2008年8月7日。2009年8月26日。2010年8月16日。(掲載時の記載)

2023年8月22日  2024年8月10日  2025年8月29日  2026年8月19日  2027年8月 8日  2028年8月26日  2029年8月16日  2030年8月 5日  2031年8月24日  2032年8月12日

ちなみに七夕は立秋か次の日あたりで秋の行事。立秋は盛夏の頃だけど夜に秋の気配を感じる頃のこと。夜の秋は晩夏の季語にもなっている。

星図はステラナビゲータ7(Copyright 2003 AstroArts Inc.)で作成しました。

 


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